プリズム眼鏡とは
プリズム眼鏡とは、プリズムレンズが使われているメガネで、両眼視の不具合による、視線がズレることによる斜視や、眼精疲労が伴う斜位などの対応策として使用される視力矯正器具です。
ものすごく簡単に言うと、片目では一つに見えるものが、両目で見た時に複数に見える場合、プリズム眼鏡をかけることで、両目でも一つに見えるようになる場合があります。
プリズム眼鏡と聞くと特殊なメガネのことだと思ってしまうかもしれませんが、「プリズム」というのはメガネ用語でいうと、光の進路を屈折させる、変化させる効果のことをいいます。
光は通常、直進する性質を持ちますが、プリズムを通ることで光の進路が屈折します。
眼鏡のレンズは光の進路を屈折させてはっきりと見える状態へと矯正をしているので、メガネのレンズはプリズムの集合体です。
メガネの単焦点レンズには光学中心というポイントがあり、視線とレンズの光学中心があわないときに、物が実際の位置よりもズレて見えることをプリズム作用といいます。
光学中心ではプリズム作用はありませんが、光学中心からズレることでプリズム作用が発生します。
プリズム作用を利用して、斜視や斜位といった状態などの視覚問題を視力矯正するメガネがプリズム眼鏡です。
プリズムレンズとは、プラスチックやガラスでできた透明体で三角柱のレンズです。
三角柱のプリズムレンズを通過すると光はレンズの厚みが厚い方に曲がります。
プリズムレンズを通過した光が1メートル先で光が1センチずれる時に1△(1プリズムディオプター、または、1プリズムジオプトリー)、
1メートル先で2センチずれたら2△(2プリズムディオプター、または、2プリズムジオプトリー)と言います。
このプリズムディオプターの量を変化させることで、視覚問題を矯正します。
また、プリズムメガネを作る際には、光の進路をどの方向にどれくらい変化させるかを考慮する必要があります。
光の方向を変化させる方向は「基底(BASE)」の方向で決まります。
斜視や斜位の種類により、基底の方向が決まります。
一例として方向を以下のように表現します。
外斜視・外斜位の場合は基底内方、ベースイン、BASE IN、B.I.、exo、右目0度左目180度
内斜視・内斜位の場合は基底外方、ベースアウト、BASE OUT、B.O.、eso、右目180度左目0度
上斜視・上斜位の場合は基底下方、ベースダウン、BASE DOWN、B.D.、hyper、90度
下斜視・下斜位の場合は基底上方、ベースアップ、BASE UP、B.U.、hypo、270度
角度を使用する場合は、斜め方向に複視がある場合が多いです。
プリズムディオプター変化させる量や方向は、一人ひとり違い、斜視の大きさや外眼筋の筋力、プリズム装用時の違和感などによって変化します。
プリズム入りのメガネは、特定の距離や角度で必要なプリズム効果を得るためのメガネです。
斜視・斜位について
斜視と斜位の主な違い
「斜視」と「斜位」は目の状態に関連する用語ですが、それぞれに重要な違いがあります。
まず、「斜視」は、両眼で見えるものを一つに合わせて立体的に見ることができない状態を指します。
これは、両眼開放状態でも、一方の目が注視している対象に集中し、もう一方の目が異なる方向を向いてしまう状態を意味します。
斜視の場合、一方の目が注視している対象に集中し、もう一方の目が異なる方向を向いてしまう状態は恒常的で、明確に視認できます。
一方の目が注視している対象に集中し、もう一方の目が異なる方向を向いてしまう状態は、立体視に影響を与え、視覚的な混乱や焦点合わせの問題を引き起こす可能性があります。
一方で、「斜位」は、潜在的な目の向きの違いがあるにもかかわらず、立体的視覚が可能な状態を指します。
斜位では、視線が耳側、鼻側、上側、または下側にズレる可能性がありますが、両眼視機能によってこのズレは修正可能です。
斜位の人々は、楽な視線の方向(安静位)から目標物に向かって筋肉を使って視線を動かすので、目が疲れやすく、物が二重に見える現象が起こる可能性があります。
斜位の場合、視線がズレる症状は一時的で、特定の状況下でのみ発生する可能性が高いです。
要するに、斜視は恒常的な目の不調和であり、立体視に影響を及ぼす可能性がありますが、斜位は一時的または特定の状況下でのみ発生し、修正可能な目の向きのズレです。
斜視について
斜視は、左右の眼の視線が一致せず、片眼は中心に焦点を合わせているが、もう片方の眼がずれる状態を指します。この状態では、両目で同時に物を見ることが困難になります。
斜視の主な特徴は、両眼の視線が同じ点に集中しないことにあり、片眼が目標に向いている一方で、もう一方の眼が逸れる状態が生じます。
斜視の症状としては、物が二重に見える(複視)現象が挙げられます。
また、立体的に物を見る能力が低下し、片眼が適切に焦点を合わせることができず、脳がその眼の映像を無視することで立体視が失われます。
斜視のある眼は視力低下を経験しやすく、弱視になるリスクもあります。
斜視にはいくつかの形態があります。
内斜視は片方の眼が内側に寄る状態、外斜視は外側に寄る状態、上斜視は片方の眼が上向きに、下斜視は下向きになる状態です。
斜視の原因としては、眼筋のバランス不良、神経異常、眼筋の付着部位の異常などが挙げられます。
また、強い遠視や近視、片眼の視力低下が眼筋バランスの乱れを引き起こすこともあります。
その他、眼筋や神経の異常、屈折異常の放置、外傷なども原因となることがあります。
斜視は外見的特徴がわかりやすいため、早期に専門家による診断を受けることが推奨されます。
正しい診断と適切な治療により、斜視の影響を最小限に抑え、より良い視覚機能を維持することが可能です。
斜位(隠れ斜視)について
斜位、または隠れ斜視とは、神経の緊張を用いて両眼の視線を目標に合わせている状態のことを指します。
この状態では、通常、視線のずれは見られず、両眼視が可能です。
しかし、片眼を使わない時、つまり片目を隠すと、斜視のように視線がずれることが特徴です。
具体的には、片目を覆うと、覆われた眼が楽な位置、すなわち外斜位の場合は外側へ、内斜位の場合は内側へ移動します。
斜位にはいくつかの症状があり、主に眼精疲労のリスクが挙げられます。
強い斜位は眼の疲れや二重視を引き起こすことがあり、斜位の量が大きい場合には眼の疲労や映像のダブり、肩こり、頭痛などが生じることがあります。
特に内斜位では目の疲れが出やすいとされています。
斜位にはいくつかの種類があります。
外斜位では安静位が外側にあり、内側に向ける動作が疲れやすいです。内斜位では安静位が内側で、外に向ける動作が疲れやすいとされます。
上斜位や下斜位では、上下の筋力が少なく、物が二重に見えやすい状態になります。
斜位の主な原因としては、基本的な眼位のずれが挙げられます。
ほとんどの人には軽度の斜位が存在します。
また、適切でないメガネ矯正(例えば遠視の低矯正や近視の過矯正)も斜位を引き起こす原因となることがあります。
両眼視機能について
「両眼視機能」とは、私たちが左右に約6-7センチ離れた位置にある2つの目を使って物を見る際に重要な役割を果たす機能です。
両眼視機能により、私たちは物の遠近感や立体感を感じることができます。
物の遠近感や立体感を感じる現象は、視差と呼ばれ、目から見える範囲に生じる若干のズレを脳が一つに統合することで起こります。
両眼視機能は生後すぐには完全ではありません。
実際、この機能は生後約3ヶ月頃から発達を始め、6歳頃には成熟するとされています。
この時期に子どもたちは、空間認識や物体の形、大きさ、位置を認識する能力を発達させていきます。
この発達段階においては、適切な視覚的経験が非常に重要です。
例えば、子供が色々な大きさや形の物体を見ることで、両眼視機能はより効果的に発達します。
このように、両眼視機能は私たちの視覚体験において不可欠な役割を果たしており、人間が立体的な世界を認識するための基本的なメカニズムの一つです。
プリズムレンズによる補正
プリズムメガネは、両眼視機能の問題、特に複視(二重に見えること)の軽減を目的としています。
通常、健康な両眼視機能を持つ人は、異なる二つの像を一つに融像(合成)できますが、複視を持つ人にはこれが困難です。
複視の対処は、場合によってはプリズム眼鏡を使用しても難しいですが、プリズムレンズによって像の重なりを調整し、問題を解決できることがあります。
例えば、外斜位の場合(目が外側に向いている状態)、遠方を見る際には目を内側に動かして物を一つに見る必要がありますが、これには筋肉を使う必要があります。
読書など近くの物を見る場合は、さらに目を内側に動かす必要があり、これも筋肉を多く使います。
プリズム眼鏡によるプリズム補正を行うことで、これらの筋肉の動きを減らし、視線を合わせる際の労力を軽減できます。
また、正面以外の8方向を見た時、像のずれ方が一定であれば対処しやすいですが、見る方向によってずれ方が異なる場合、問題は複雑になります。
正面視時のずれを最小限に抑えるためには、フレネルプリズムやフランクリンタイプのレンズなどの部分的な使用が有効な場合があります。
これらは完全な解決策ではないものの、状況を改善することは可能です。
片眼の像が回旋している場合や、眼の疾患により像に歪みが生じている場合には、プリズムレンズでの解消は難しいです。
さらに、プリズムを付加することで位置のずれは減少するものの、融像ができなかったり、逆方向にずれることもあります。
左右の眼で見える像のバランスによっては、プリズムレンズを使用しても両目で物を一つに見ること(両眼単一明視)が難しい場合もあります。
複視の原因は多岐にわたるため、プリズムメガネがすべての複視を解消できるわけではありません。
したがって、プリズムレンズの使用は、一人ひとりの具体的な状況に応じて慎重に検討する必要があります。
プリズムの測定について
正しい視力測定をする際には、プリズムを入れる必要があるのかを測定する必要があります。
メガネにプリズムを入れる際は、プリズムの量と方向が重要です。
適切なプリズムを決定するために必要な情報である、眼位、眼球運動、輻輳開散力、斜位方向などの測定の例を紹介します。
プリズム分離法やポラテスト法だけでプリズムを決めることはできませんので注意してください。
眼位測定
普段の状態で、遠方近方でのカバーテストを行い自覚他覚から、斜視、斜位の有無、大まかに両眼視に影響を与えやすいかどうかを見極めます。
カバー・アンカバーテスト
特別な機器がなくとも斜位や斜視の性質やその量がおおよそ解る。プリズムバーがあればその量をほぼ知ることができる
眼球運動測定
外眼筋と外眼筋の視神経を確認します。追従性眼球運動で確認します。
輻輳近点測定
大まかに実勢融像性輻輳の量を確認します。
純粋な遠方近方実性虚性融像性輻輳の量を測定する際はローターリープリズムを利用します。
斜位方向や量にもよりますが、実勢融像性輻輳との兼ね合いから近方での輻輳関係の眼精疲労が予測されるかの判断材料とします。
瞳孔間距離の測定
モノキュラーPDの測定を差し引いた目視やピューピロメーターで行います。
フォロプターや仮枠での光学中心距離を瞳孔間距離に合わせるために測定します。
プリズムの発生や誤った補正効果を発生させないために合わせる必要があります。
遠方近方斜位測定
遠方斜位の数値が大きい場合、近方斜位測定も行います。
遠方近方で水平上下の斜位測定を3つの方法を使い分けて行います。
プリズム分離法 ポラテスト法 マドックス法
水平斜位が輻輳開散の基準点であると考えるためロータリープリズムを用いてしっかりと測定します。
遠方近方上下開散力測定
プリズムを用いて左右の眼の上下方向の開散力を測定します。
累進多焦点レンズを使用する際は、下方視線をとるときに上下に複視が起きる場合もあります。
不同視といわれる度数差でなくても確認を行います。
片眼・両眼調節ラグ測定
主に、加入度の測定に用いますが、本来は調節刺激に対して調節反応がどれくらい調節反応しているかを測定しています。
老視眼の場合は足りていない調節反応分を加入度として加えています。
また、片眼・両眼測定することで、調節不全または調節過剰、輻輳不全または輻輳過剰なのか判断材料としています。
ワース4灯測定
遠方斜位測定の測定結果の値が大きい場合に行います。
融像・複視・抑制を大まかに測定します。
抑制を強く誘発させる仕掛けのため、赤レンズ測定も行い、抑制の深さを確認します。
赤レンズ測定
複視の場合、赤レンズ測定を行います。
融像・複視・抑制を測定します。
主に上下プリズム処方の決定に用いています。
フォロプターで測定するのが難しい場合は
外斜位、内斜位の測定をする場合
プリズムバーを用いて輻輳開散力の測定をして
仮枠で輻輳開散量を確認します。
Land&rutoのプリズム眼鏡の値段について
Land&rutoでは、レンズ価格+4000円(税抜)で組み込みタイプのプリズムレンズにすることができます。
フレネル膜タイプはお取り寄せでのご対応になります。
プリズム眼鏡の種類
プリズム眼鏡は、斜視などの視覚的問題に対処するために使用される特別な眼鏡です。
これらには主に「組み込みタイプ」と「フレネル膜タイプ」という2種類が存在します。
組み込みタイプ
このタイプのプリズム眼鏡は、レンズに直接プリズムを組み込む形式をとっています。
一般的に最大5Δ(両眼で10Δ程度)までのプリズム度数に対応し、小角度の斜位には最適です。
外見上プリズムが入っていることがほぼ分からないのが特徴ですが、プリズム度数が強くなると、横から見た際に基底方向が分厚く見えることがあります。
ただし、大きな斜位には対応できず、プリズム度数の変更には新たなレンズの作成が必要です。
また、5Δまでのプリズムを入れるとレンズが重くなるというデメリットもあります。
フレネル膜タイプ
このタイプは、1〜40Δの大きな斜位に対応可能で、眼鏡に水で貼り付けることができます。
必要に応じて簡単に貼り替えることが可能で、プリズム度数が強くても厚みが均一で薄いのがメリットです。
度数の変動があっても貼り替えが可能で、さまざまな貼り方ができます。
しかし、フレネル膜を通して見ると視力が低下することがあり、外見上も貼り付けてあることが分かります。
また、経年変化による変色や劣化が見られることがあります。
フレネル膜が不快な場合、手術が適応になることもあります。
自分で貼り替える際は、間違った方法を避ける必要があります。
プリズムレンズのタイプの選び方
斜位が小さい場合は組み込みタイプ、大きい場合はフレネル膜タイプを選択します。
場合によっては、両方を併用する方法もあります。
組み込みタイプとフレネル膜タイプはそれぞれに異なる特徴と利点があります。
適切な処方を行うためには、これらの特徴を理解し、症例に応じて適切な選択をすることが重要です。
プリズム眼鏡は正しく使用することで、視覚問題を効果的に補助し、日常生活の質を向上させることが期待できます。
プリズム眼鏡のデメリット
プリズム眼鏡は視力問題に対する解決策ですが、レンズの厚み・重さ、色収差、慣れるまでの時間、空間歪み、視線のズレ、他の矯正ツールとの併用困難などデメリットがあります。これらは装用感の低下、視覚的不快感、立体感の違和感、遠近感の影響などを引き起こすことがあります。選択する際は、デメリットを理解し、ニーズやライフスタイルに合わせた適切な選択が重要です。
以下の記事では、プリズム眼鏡のデメリットについて詳しく紹介しています。
プリズム眼鏡のコラム
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Land&ruto店長 北上寿一
石川県金沢市の完全予約制の眼鏡店 Land&rutoでメガネを販売しています。
メガネ専門店、大手チェーン店、コンタクトレンズ販売店を経て2005年開業。時代の流れに合わせて変化するメガネのニーズに対応するため日々努力しています。眼鏡作製技能検定 1級眼鏡作製技能士
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